イントロダクション
「もうね、これでいいよ。」 BTR17を使って音楽を流した数秒後の偽らざる感情。
無線の時代、ワイヤレスだけの時代ってやっぱりくるんだろうな、ってのを実感。 FIIOの大人気 最上位Bluetooth DACだったBTR7の後継が出るぞ出るぞと言われてはや数か月。ヘッドホン祭り等でのチラ見せを経てついに「FIIO BTR17」が海外販売開始された。ポータブルオーディオファンが待ち望んでいたBluetoothトランスミッターであるFIIO BT11とともに、このBTR17も記事が出るや否や非常に多くのアクセスを獲得し、大きな期待感が寄せられていた。
考えてもみるとこのBluetooth DACってのは割と中途半端というか、 利便性に重きを置いて音楽を楽しむ完全ワイヤレスイヤホンを使うパターンと、音質に妥協をしたくない際にあえて従来の有線接続で音楽を聴くパターン、この2つが現代の音楽を聴く主流(スピーカーでの堪能を除く)だと思うが、Bluetooth DACまでは従来の有線でイヤホンを接続し、そのBluetooth DACからは利便性を享受できるワイヤレス接続になるという双方の中間というかいいとこどりというかやむに已まれぬ折衷案というか、、、いずれにしても有線と無線の中間みたいな音楽の楽しみ方である。
ただベテラン ポータブルオーディオ愛好家はお気に入りのIEMイヤホンやヘッドホンを持っていがちなので、そのお気に入りでワイヤレスの自由度を味わいたいという人も多いのか、いぜんからこのBluetooth DACはある一定の支持を得ていたかと思う。 そして今回その最高峰ともいえる製品が降臨した。大人気製品のメジャーアップデートである。
FIIO BTR17 – ザ・モンスター
前述の「お気に入りのイヤホンやヘッドホン」実はこれが曲者だ。大抵これらの「お気に入りの製品」は安価な汎用的製品ではなく、ある程度高価な「きれいな音・力強く繊細な音を鳴らす」がそのためには出力デバイスにパワーを要求するものだからだ。スマホからイヤホンポートが無くなってからかなり時間が経つが、この手の愛好家たちはスマホにイヤホンポートがあったとしてもそれを使わない、というか使っても本来の期待する音をスマホでは鳴らしきれないからだ。 そのためFIIO KA17のようなUSB DACが以前から愛用されていた。USBに100円ライター弱のデバイスを接続して、そこにイヤホンをしかもバランス接続の4.4mmイヤホンポート経由で接続してスマホ+αで音楽を楽しんでいたのだ。ただそれだと結局従来と変わらないスマホまでの長い有線接続が必然となり、パワーが必要なイヤホンやヘッドホンを鳴らしきるために電力をスマホから吸い出してスマホの稼働時間を狭めてもいた。
ワイヤレスの自由度をある程度享受する。高価なイヤホンやヘッドホンを鳴らしきるためのパワーの確保。この両立への期待、それがこのモンスターマシンFIIO BTR17への期待につながるのだ。 なぜか。それが今回のこの世代から追加された「デスクトップモード」に他ならない。必要なパワーを底上げするために外部追加電源を用いるモードを備えているのだ。この「デスクトップモード」は前述のUSB DAC 「FIIO KA17」あたりから追加されたモードだ。スマホからの電力供給を抑え、かつパワーを底上げするための外部電源ポート経由での電力確保。このおかげでパワーの必要なイヤホンやヘッドホンをこういった小型デバイスでも堪能できるようにしてきたのだ。
それが満を持してBluettoth DACにも搭載された。時にはUSB DACの代用としても使用可能なこれらBluetooth DACで使える「鳴らすことが難しい」イヤホンやヘッドホンを使えるようにしてきたのは大きい。ただこの外部電源を確保するためにはどうしてもアディッショナルな電力接続が必要になるので、機動性との担保というか、これまた制約とのせめぎあいになるのは容易に想像できる。 今回はこのメインフィーチャにもスポットライトを当てて試聴していきたいと思う。
スペック等
試聴や開梱の前に少しだけスペック等を押さえておきたい。といっても詳細のスペックは既にオフィシャルサイトに掲載されているのでそちらを見ていただくのが早いであろう
ポイントとしては、DACチップには各社最上位クラスのUSB DACで使用されているESSの省電力高機能チップES9069Qをデュアルで配置、Bluetoothチップには最新式ではないもののQualcommのフラッグシップ級Bluetooth SoCであるQCC5181を採用。USBコントローラーには定評のあるXMOS XU316を採用。これらハイスペックチップ等を採用することで、有線接続 PCMでは768kHz/32bitまで対応。BluetoothコーデックはLDACに加えて、話題のLosslessコーデックであるaptX Lossless対応のaptX adaptiveにも対応している。LE audioにも対応しているような記事も見かけたが当方では未確認だ。(アプリ上でも表示がない) アンプにはクリアでパワフル、フラッグシップ級のDACやDAPで使われているTHX AAA 78+を採用。そして目玉であるデスクトップモードはこのアンプへより多くのパワー供給を支えて、バランス出力時には最大 650mW+650mWの出力となり、先代BTR7と比較して驚異的な203%の増加の出力を可能にすることとなるのである。デスクトッブヘッドフォンアンプに匹敵するレベルともいえよう。このように全てが妥協のないパーツで構成されており、比類なきパワーを生み出す下支えとなっている。
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購入はTaoBaoから。定価 $199より少し安いくらいの$180弱だったが配送費用を考えると同額ぐらいか。定価自体は先代のBTR7から変更がないそうだが、円安のいま日本での定価はどれくらいになるだろうか?
パッケージはいつものFIIOのパッケージ同様シンプルな雰囲気。小物入れがおまけについてきた。裏面を見ると非常に多くのテクノロジー系のロゴが並ぶ。これだけロゴが並ぶのはあまりお目にかからず壮観だ。
本体の色は黒と青の二種類から選べる。同梱物は基本的にシンプル。裏面にクリップが付いたケースが標準装備なのがありがたい。急場しのぎで作ったような感のあるマニュアル(わら半紙に近いぺらぺらw)には日本語ページもあり安心だ。
本体を手にした時の軽いずっしり感(小ぶりな筐体に74g)と、手に触れる少し冷たい金属感はプチ所有感をそそり非常に心地よい。プラスチッキーな他の製品との差別感は著しい。裏面にはエンボス加工された「Plain leather」で覆われている。どうやら人工皮革のようだ。ということは長時間経過後のベトベト加水分解にならないことを祈りたい。とはいえこの部分の触感も手に心地よく、滑りずらさとともに非常にウェルカムなマテリアルだ。
ボタンやポート類は以下の通り。一番目の引くダイヤル式のノブは適度に硬く軽いカチカチ感がある回転に信頼感が上がる。100段階の音量調整に使われるノブはクリッカブルなボタンにもなっており、各種決定や曲の再生停止などにも使われる。大きなディスプレイの視認性は高い。このくらいの大きさだとタッチ式かなと思って触ってみても何の反応もないw 他の製品ではあまりお目にかからないマイク穴もある。胸元や顔近くに持ってきて使うのが正しい使い方だ。上部にはイヤホンポート、3.5mmのシングルエンドに加えて4.4mmのバランスアウトも。底部にはUSB Type-Cポートが2つあるのが独特な点だ。日本語マニュアルには「USB: Type-C充電デコーディング端子」「POWER IN: Type-C充電 / 電源供給端子」という表現となっており、初見では用途の違いが判らない。後述するが使い始めた後でもきちんと理解しないと各種モードとの連携で少し頭がごちゃごちゃする。
過去製品との大きさ比較もしてみた。残念ながら先代BTR7は持ち合わせておらず、さらにその先代的なBTR5がメインの比較対象となることを了承いただきたい。一番左がBTR17、その隣がBTR5、右から2番目がライバルシリーズであるShanling UP5、一番右が名機Qudelix-5K名機Qudelix-5K。大きさとしては断トツでBTR17が頭一つ飛び出している。厚さもUP5と同じくらい、Qudelixは標準装備のクリップの部分だけQudelixの方が厚い。右下の写真はBTR5との比較。他と比すると確かに大きいが手のひらになじむ大きさと表面積に比べて感じる薄さ、見た目よりも軽いが心地よい重さなどが相まって嫌な感じは全くしない。というか安心感もあって悪くない。
見た目つながりでいうと大きめの1.3inchディスプレイはカラーで非常に視認性が高い。コーデックも文字とともに色で表示されるので瞬間的に判断しやすい。ただ画面下部のPQやSQなどの表現はあまりなじみがなく、ぱっと見で判断が付きにくいのがもったいない。標準語なのだろうか?
本体メニューも豊富でほぼ本体だけですべての設定ができるのではないかと思うほどだ。現段階で言語は英語と中国語のみで日本語表示はない。一方画面の見やすさと比してメニュー上のどれが選択されているのかがぱっと見で分かりにくいのが残念だ。視覚力が低くなる中高年男性には少しつらい。
いざ試聴、、、その前に
さてようやく試聴の段となるがその前にアプリもチェックしておこう。アプリはFIIOの操作系アプリであるFIIOコントロールを使う。Bluetooth接続は一発で完了。当方のXiaomi 14 Uktraでは標準でaptX Lossless接続となった。FIIOコントロールを見るとすでにメニュー上の選択肢にBTR17がリストアップされている。上々。
下図左がデフォルトの画面。各種ナビゲーションメニュー以外は画面消灯系の設定とコーデック選択だけのシンプルな内容だ。コーデックは下図右のように対応を謡われているコーデックが列挙されている。ここでaptX系をアンチェックしてBluetooth設定画面でLDACをオンにすると問題なくLDAC接続となる。
続いてイコライザーの画面。豊富なプリフィクス系のEQとともに目を引いたのがインターネット上からEQ設定を探し出してダウンロードする機能。これあまりお目にかからないがありっちゃありと思っていた機能。意味があるかないかは微妙っちゃ微妙だが。。。
仔細試せていないが下図が音質設定マニアにはたまらない?詳細音質設定画面等。フィルターの選択とともに歪み最適化や2次高調波最適化など見慣れない設定もある。この他にファームウェアダウンロードなどの設定ももちろんあるが現時点で最新のFWがあたっているとのことだった。
いざ試聴、、、は続報をお待ちを。。。
ということでようやくの試聴だが紙面が長くなってしまったので後編での紹介とさせてください。最冒頭でも既述した通りこのFIIO BTR17 「もうこれでいいんじゃない?」ってくらい非常に満足度の高い試聴経験だったたことを先にお伝えしておく。メイン機能であるBluetooth接続とともに、KA17等と比較したUSB DAC接続での試聴もレポートしたいと思う。
このように主に概要紹介と開梱レポートやアプリの紹介などしてきたが、手にした感触が非常によろしく、適度な大きさ、適度な重量、気持ちの良い触感などが相まって「良ガジェットを持つ喜び」を体現したような商品体裁だった。 想像よりも本体が薄く、かつ裏面のPlain Leatherが温かみを与えてくれるのが好印象だ。
上記の通り試聴雑感も非常によく、大急ぎで仕上げている続報を待たれたい。
それでは今回はこの辺で。
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