今、あえて問おうワイヤレスイヤホンの真のコストパフォーマンスとは? 真の適正価格とは?
なぜ今、EarFun Air Pro 4を取り上げるのか
このブログの独自性及び差別化ポイントは、海外で発表されて日本ではまだ手に入らないガジェットをいち早く個人輸入して自腹人柱体験レポートをすることにある。よって日本で簡単に手に入るガジェットは数多の情報サイトや諸先輩方のレビューサイトに委ねている。というかお任せしている。 というかかなわない。。。 標題のEarFunは中国発祥のブランドで当ブログの対象ではあるが、比較的グローバル発売に近いタイミングで日本のAmazon等での販売を開始するため当ブログに取り上げにくいブランドの一つであった。しかし、このEarFun Air Pro 4を発売からある程度時間がたった今、敢えてレビュー記事にしたためる理由は一つ、「感動した」からである。
ハイコストパフォーマンス
この夏に発売したばかりの新製品であるEarFun Air Pro 4の価格はAmazonでベースラインの価格が9,990円。しかもほぼレギュラーでさらに1,500円クーポン、つまりほぼほぼ(定価)が8,500円という低価格から中程度の価格帯に属する製品である。現在市場にはBowers & Wilkins Pi8やEdifier STAX SPIRIT S10など、当ブログで取り上げた高価格帯の製品が人気を博しているが、それら4‐6万円代の製品価格帯と比すると1/4~1/8くらいの値段ということになる。価格差だけを見ると軽自動車 対 高級外車の値段差位の開きだ。結論から言おう、軽自動車は負けていない。まさにハイコストパフォーマンス、それが今回紹介するEarFun Air Pro 4だ。実は発売当初に手に入れていたのだが他を優先するあまり塩漬けにしてしまっていた。しかしそれを後悔することになろうとは。。。
ハイスペック but ロープライス
多くのブログなどですでに仔細がレビューされているので敢えて深堀はしないが、冒頭で記した「感動した」ポイントは音質もさることながら、この値段で最新スペックをこれでもかと詰め込んでいるところだ。
- Bluetooth 5.4対応
- Snapdragon Sound対応
- QCC3091搭載
- ハイレゾワイヤレス認証でLDAC対応
- aptX Lossless対応 (aptX Adaptive拡張)
- LE audio, Auracast対応
- 最大50dBのハイブリッド・アダプティブ ノイズキャンセリング
- 50ms低遅延ゲームモード搭載
- 最大52時間の長時間再生(ケース込)
- ワイヤレス充電対応
- AI技術をうたう6マイク搭載
- Google Fast Pair対応
- イヤホン本体のIPX5防水
- アプリ対応
- EQカスタマイズ対応 などなど。。。
書き出したらきりがないほどの対応・対応・対応である。防水がIPX7にさえなればまさに現時点での真の完璧な最新スペックイヤホンだ。いや既にほぼほぼ完璧なスペックである。この価格で、だ。恐ろしい。
aptX Lossless対応
ここから特筆すべきポイントについていくつか取り上げたい。まずはaptX Lossless対応だ。これまでのBluetoothコーデックであるSBC, AAC, aptX, LDAC等は非可逆圧縮のコーデック、つまりスマホなどの送信機サイドで聞き取れない音などのデータの一部を省いたり変換したりしてデータを小さくする方式を使っていた。高音質コーデックの代名詞であるLDACでさえも非可逆圧縮なのだ。しかし送信機側の条件を整えなければならないものの、aptX Losslessでは文字通りデータを省くことなく、最大16bit/44.1kHz(約1.1〜1.2Mbps前後)のCD音質で原音を再現することができるのだ。LDACの高音質モードでさえ990kbpsの安定した接続が求められるので、さらにその上をいく安定した通信品質を求められるということ。 有線イヤホンの差別化要素であった原音をならすという要素をワイヤレスで実現してしまうのだ。
吸い込まれるような、あのノイズキャンセリング強度
Boseなどのイヤホンで最強レベルのノイキャンスイッチを入れた際に感じる宇宙空間に引き込まれるようなあの感覚。それが1万円未満のこのイヤホンで体感できるのだ。数々のノイキャン製品を試してきたが最強クラスと位置付けてもよいのではないかと思うほど。しかもアプリを経由して使い手のチョイスでノイキャンの強度や効かせるタイミングを指定できるモードを多数用意しているので、強ノイキャンの押し付けじゃないところがまた良い。すごいぞ、このノイキャン。
納得感の高いEQカスタマイズ
既に会社が買収されブランドチェンジをしたものの、聴覚プロファイリングデータに基づいたカスタマイズサウンドで名をはせたNuraTrue Proを始めとした高価格帯の製品で主に搭載されているユーザーごとのカスタマイズEQ機能がこの製品にも搭載されている。しかも「ちゃんちゃらすっちゃんすっちゃっちゃ」みたいな謎の音を聞かされて設定されるプロファイリングではなく、周波数帯域毎に聞こえる音のレベルをひとつひとつ調整して完成させるカスタマイズなので非常に納得感が高い。もちろん簡易的な音楽ジャンルごとの設定を呼び出すことも可能だ。
アプリの充実度
低価格帯のイヤホンでは省力されることもある独自アプリケーションだが、EarFunのアプリは高価格帯の製品付属のアプリを凌駕せんばかりのまさに痒い所に手が届くユーザビリティの高さが際立っている。ファームウェアの更新はもちろん、前述のノイキャンの多岐にわたる選択、個人ごとのイコライザーのカスタマイゼーションはもちろん、タッチ動作のカスタマイズもかなり柔軟に行える。使用するコーデックの選択と対応も簡単に行えるし、デュアル接続ももちろん対応している。このようにアプリが充実していると製品に対する信頼感が飛躍的に高まるし、購入する際には見えづらいところにもきちんと投資をしていることで更に好感が持てるというものだ。
音質・試聴感
まず試聴前の製品の質感等だが、さすがにコストとの兼ね合いもあろうがどうしてもプラスチッキー感は否めない。軽い分には長時間の使用に負荷が少ないが、手にした際の高揚感や所有していることへの優越感などは感じられない。だがそこがポイントでもある。ひとたび音楽を流すと良い意味で「期待が裏切られる」のだ。 当方このイヤホンの試聴にXiaomi 14 Ultraを使っており、この製品の目玉であるaptX Losslessを通じてTidalのLDACやUAPPのハイレゾ音源を聴くことができた。まず驚いたのがLDACをも上回るビットレート接続を必要とされるはずなのにぶちぶち言わないのだ。さすがに地下鉄や混雑した交差点などでは安定した接続は難しいかもしれないが室内でWiFi経由でのストリーミングやローカルハイレゾ音源を聴く際にはほとんどストレスがない。ストレスがないどころが前述のカスタマイゼーションが効いているのか、年齢に比例して減っていく可聴領域を補って「聴かせている」音は特に広域で満足感が高い。もちろん完ぺきではない。もう少し中音域が欲しいなどと思う時もあるが、その際はEQをいじって追い込んでいけばよい。良い意味での期待の裏切りとともにそれなりの満足した音が「簡単に」聴けるのがすばらしいのだ。確かにピンクフロイドのタイムなどを聴いていると導入のインストの所でもう少し広がりや奥行きがあったらなとも思ったりもしたが、これ数千円の製品なんでした、と気が付く。恐れ入った。
ただ一点気になったのがLE Audio対応についてだ。現段階でのLE Audioの相性というのは依然存在しているので今回もこの「相性」の問題なのかもしれないが、LE Audioでの接続がうまくいかなかった。他のLE Audio対応イヤホンでの接続は今までもできていたことが多いので、もう少しこの辺は追っていこうと思う。
主題:真のコストパフォーマンスとは?
今回のコラムのタイトルでも掲げた、「真のコストパフォーマンスと適正価格とは?」というお題。ここで「それは個人の主観に過ぎない」と言ってしまえばハイそれまでよとなるのだが、他社特に高価格帯の製品群を擁するライバル企業達には「価格の意味付けと証明」にこれら「低価格高付加価値」の製品は大いに脅威となってくるであろう、「8千円の製品でこれだけできるのにあなた方は?」である。もはや「これでいいんじゃね?」となってしまう納得感さえこの製品は生み出してしまうからだ。
他の商品ジャンルと同じようにイヤホン界隈もインフレの流れを受けて価格帯が一段も二段も上がってきているように思える。8千円ほどの製品がこれだけ価値を挙げてきていることに対して、高価格帯の製品はきちんと納得感がある価値を提供しなくてはならないであろう。デフレ時代のアイディアをひねり出して高めた「低価格高付加価値」製品の登場が刺激となって、インフレ時代で次代への革新に繋がることへ期待する思いが沸き上がってくる。そんな次代へのエポックとなるかもしれない製品に巡り合えた気がする。
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