aptXの名がつきながらBluetoothのカテゴリーは”LC3″。未だ正式情報に乏しい謎を秘めた”aptX Lite”対応が一番の目玉になるに違いない新進気鋭のBTトランスミッターを自腹実機レビューします!
xDuoo
はやる気持ちを抑えながら、まずは今回の主役“xDuoo MX-C1”について紹介しておきましょう。発売している会社xDuooは一般的には知名度がほぼないに等しいであろう中国のメーカー。中国・深圳発、Hi‐Fi・ポータブルオーディオ界隈で頭角を現すブランドの一つ。もともとは他社の製品設計/製造を手がけていた ODM メーカーでしたが、5-6年ほど前からでしょうか? 自社ブランドで表舞台に立ち始め、Aliexpressで日本のオーディオファンの目に留まり始め、今や日本のAmazonでも多くの商品が取りそろえられるようになりました。エックスドゥーとかシュェンドゥーとか表記されるので私は勝手にエックスドゥーと呼んでいます。

xDuoo MX-C1
そのxDuooからこの9月頭に発売されたばかりの商品がこちら。群雄割拠、未だ覇者が現れないUSBドングルタイプのBluetoothトランスミッターの世界に殴り込みです。と、物騒な表現ですが実際はひっそりと商品をリリースし、あわや見逃しそうなほどでした。ページを進めそうなときに一つの言葉が目に留まりました。それは、
aptX Lite
なんじゃそりゃ? Liteって? 初めて見るぞ! しかもaptXっていうQualcomm系の名前でありながら”LC3″のカテゴリーとして紹介されているし。
急ぎ輸入の手続きをしつつ、傍らで“aptX Lite”なるものの情報収集です。

aptX Lite
謎のコーデック “aptX Lite”
“aptX Lite”この名前でググってみていただければお分かりの通り、ほとんど情報がありません。Qualcommのトップページから検索しても一致した情報はまだありません。
ただググった結果、情報感度の高い方のSNS投稿からいくつかのキーワードが読み取れました。それは、
- GMAP
- Snapdragon Sound Gaming Codec
Xの情報から読み進んでいくとイヤホンメーカーのNuarlさんの中の人の書き込みに核心に迫る情報が流れ込んできました。
現時点でaptX Liteの名称は正式名ではなくQualcomm社では「Snapdragon Sound Gaming Codec」と規定されておりますが送信側の仕様としてはこれに対応しております。ただし、このコーデックはSnapdragon Sound対応機器同士でないと動作しません。なお、弊社ではまだ動作確認が出来ておりません。
まーた悪名高きQualcommによる囲い込みか!と思われる方もいらっしゃりそうですが、、、w いずれにしても、どうもGamingで使用されるコーデック、つまりは低遅延に重きを置いたものとも推測できます。
今度はGMAPでググってみると、Bluetooth SIG(BT認証を司る団体)のページにたどり着きました。そこに書かれていたのが、
Gaming Audio Profile
Introducing Bluetooth® LE Audio 2nd Edition
– New profile overviews: New chapters on the Public Broadcast Profile, Broadcast Audio URI, and Gaming Audio Profile (GMAP) to reflect recent specification updates
24 January 2025
どうやら正式なBluetooth認証団体に認められているプロファイルにも関連しているようです。Qualcommによる囲い込み技術と思いきや、ここにきて正式認証系の情報です。このBluetooth SIGがまとめたLE audio 2nd Editionなるリンク先のBookを読みこんで見るとGMAPの概要が見えてきます。

GMAP
そこに書かれている情報をまとめると、
GMAPとは: Bluetooth SIG が策定した LE Audio(Bluetooth Low Energy Audio/Bluetooth LE を用いたオーディオ伝送方式)の アプリケーション・プロファイルのひとつで、「ゲーム用途(Gaming)に特化したオーディオ体験」を実現するための仕様
- ゲーム中のサウンド(効果音、環境音など)+ゲームチャット等が含まれる双方向通信(マイク/音声チャット)をできるだけ遅延を抑えて実現すること。付随して、複数デバイスへのブロードキャストもサポート。
- 対応する LE Audio 技術要素:
- Unicast(1対1または1対多で接続するアイソクロナスストリーム)
- Broadcast Isochronous Stream(BIS)を使ったブロードキャスト
- 48 kHz サンプリングレートなどを指定する構成が含まれる
- Bluetooth v5.2 以降、LE 2M PHY 等の無線リンク品質(物理レイヤ)が要件として挙げられている
- ゲームチャット用の下り/上り(音声マイク)を含むユースケースに配慮している
- QoS と遅延(transport latency、presentation delay)に関する具体的な要件が設定
- GMAP では、ゲーム用途としてユーザー体験が許せるレベルの遅延(オーディオの遅れ)ができるだけ小さくなるよう、複数のレベルのパラメーターが定義されていて、少ない再送(retransmission)/presentation delay(サウンドがユーザーに出力されるまでの時間)が短くなるよう設計
- 送信側・受信側それぞれに端末役割が定義されており、ユニキャスト/ブロードキャストの両モードがある
うーん、具体的のような具体的でないような… ここにきてQualcommやaptXの名前を見つけることができずにあくまでLE audioの世界の話となってきており、現時点では:
GMAP:
Bluetooth SIG が策定した LE Audioのアプリケーション・プロファイル で、コーデックは規格側で固定していない。 つまり「低遅延・双方向(ゲーム+ボイチャ)に適したプロファイル定義」であり、コーデックとしては LE Audio 標準の LC3 を前提に使える枠組みである
という情報になります。ただこうやってみるとBluetooth SIGでカッチリと企画固定されたコーデックではなくあくまでも枠組みでしか無いようで、ここにきてこれを利用し、パッケージングした仕組みを考え出すことができそうな流れ、つまりQualcommがBluetooth SIGが正式策定したGMAPという枠組みを活用したプロファイル(コーデック)をリリースしたものがaptX Liteというマーケティング名で世に出始めてきている...という可能性が出てきました。
ただ、調査自体はここで行き詰ってしまいます。何にせよ、aptX Liteについて正式に説明したWebページを見つけ出すことさえできないからです。なので現時点ではあくまでも推論としてaptX Liteとは何かを想像しつつ、実際の製品での挙動を見ていきたいと思います。果たしてaptX Liteに対応した受信側(TWS/OWS)はあるのでしょうか、、、?
このパートのまとめ: 現時点での推論: aptX Liteとは?
aptX Liteとは(推論):
QualcommのLE Audioスタック/SoC上でGMAP(=LC3低遅延運用)を有効化する設定やファーム構成に対するQualcommが企画し、定義づけたGaming(低遅延)目的の新・プロファイル(コーデック)のことである。。。。。。。。。。(かもね)

xDuoo MX-C1: スペック・パラメーター
ということで、謎のaptX Liteはこの後の実証実験wでも確認しつつ、まずは製品情報をお知らせします。
xDuoo MX-C1
- Input Interface:USB-C
- Power Consumption: 5V/0.018A
- Bluetooth Chip: QCC3086
- Bluetooth Version:5.4
- Bluetooth Formats:
- Classic Bluetooth:
- SBC、aptX、aptX HD、aptX Adaptive(aptX Low Latency、aptXHigh Quality、aptX Lossless)
- LE Audio:
- LC3、aptx Lite
- Classic Bluetooth:
- Transmission Latency: <20ms(even lower in game mode)
- Transmission Distance: About 10 meters
- Dimensions: 29.6×23×8mm
- Weight:3g
このようにスペックやパラメーターを見る限りでは、ある層にとっては残念で購買意向が萎える要素でもある“LDAC非対応”の”LE audio対応・USBドングル型Bluetoothトランスミッター”として、まぁ言っちゃあなんだけど、良くある感じの商品です。ただ一つ、”aptX Lite” という文字を除いて。
で、このパラメーター以外の情報としては、
- iPhone対応を明示している(おそらくiPhone 15以降のUSB-Cモデル以降だと思われるが)
- 各種家庭用ゲーム機器への対応を明示している(Switch対応も歌っているのでUAC 1.0対応か)
- 恐らく専用アプリは無い(パッケージ内でも説明書でもHPでもアプリの情報なし)
- 現在 AliexpressやHifiGoなどで、$39.9前後で販売中(6,000円弱)

オープン・ザ・ボックス
ということで、実際に中国から届いた商品を開梱していきましょう。私の場合は発売日にTaoBaoで購入して1週間強で届きました。230元前後、$33ぐらいでしょうか。(送料除く)
パッケージは8cm四方の非常に小さなもの。表面には特に目立った情報はなく、ハイレゾロゴと共に、LE audioとaptXの文字が並んでいます。一方裏面には情報が詰め込まれており、今回話題のaptX Liteの文字が光っています。こちらLEDの色でaptX Lite接続が判明するようです。

残念ながら本製品は日本の「技適マーク」を取得していません。日本国内で無線機能(Bluetooth 等)を使用(試用)する場合、つまり実験目的で使用する場合は、総務省「技適未取得機器を用いた実験等の特例制度」への届出が必要です。ご注意ください。
そして、本体がこちら。なんというか、形としては非常にオーソドックスなものだと思います。但し一点優れモノが! そう物理ボタン搭載なのです。しかもペアリング系だけの簡易的なボタンではなく、接続コーデックを変更できるという触れ込みです。後での実験が楽しみです。で、本体下部にLEDらしきものが見えますが、ここの色で接続しているコーデックを判別できます。
内容物は説明書だけの非常にシンプルな同梱設定。説明書は中国語と英語のみです。

大きさに関しては、これ一つだけ出していてもわかりにくいので他社のライバル製品を並べてみます。

先日ご紹介した最新機Eppfun 3040 Pro Ultra 2を始め、上段のCreativeとEppfunの製品は縦長コンパクト。対して本機MX-C1とFiio BT11はスマホやゲーム機に接続した際に邪魔になりにくい横長タイプ。xDuooとFiioの製品はほぼほぼ同じくらいの大きさ(若干xDuooの方が大きい)です。Fiio BT11には搭載されていなかった物理ボタンに期待が高まります。
大接続実験大会
実験と銘打っちゃっているところが中二病っぽいですが、いよいよ接続の時。果たしてaptX Lite色にLEDは輝くのでしょうか。
上記説明の通り、コーデックの判別は本体下部のLEDの色で区別します。またデフォルトでクラシックBluetoothフォーマットを使用する仕様となっており、その後本体中央の物理ボタンを二回押すことでLE audioフォーマットモードに変更します。それぞれのフォーマットでの接続時に物理ボタンを短く一度押すことで接続コーデックを変更することができるとのことです。
コーデックの色判別は以下の通り:
- クラシックBluetooth:
- aptX AD-Lossless(白)、aptX AD(紫)、aptX HD(紫)、aptX(紫)、SBC(緑)
- LE Audio:
- aptX Lite(黄)、LC3(シアン)
果たして幸福の黄色いLEDを見ることはできるのでしょうか。。。? ここに来て、冒頭で紹介したNUARLさんの中の人の一言が不安をあおります、、、果たして。。。
現時点でaptX Liteの名称は正式名ではなくQUalcomm社では「Snapdragon Sound Gaming Codec」と規定されておりますが送信側の仕様としてはこれに対応しております。ただし、このコーデックはSnapdragon Sound対応機器同士でないと動作しません。

7~8種類のTWS/OWSを試した結果成功したのは…
- Creative Aurvana Ace 2
- Cleer Arc 5
この2つが問題なくLE audioモードで接続成功し、かつ黄色いaptX Liteなるコーデック(プロファイル?)で接続することができました。もちろんこの2機種とも対応コーデックに”aptX Lite”は含まれておらず、あくまでも『LE audio対応(LC3)』とうたっています。この2つのうちでも一番きれいにハマったのはCreative Aurvana Ace 2のほうで、SBC/aptX系/aptX Lossless + aptX Liteというように、緑/紫/白+黄と接続変更ができました。Cleerの方はaptX系(紫)接続ができませんでした。また双方ともLC3(シアン)での接続はなく、aptX Lite(黄)のみの接続でした。

Creative Aurvana Ace 2は正式にBluetoothチップを明かしておりませんが、恐らくQualcommチップを使用していることは間違いなく、Cleer Arc 5はSnapdragon Sound S5使用を明言しています。つまりQCC3086を使用しているMX-C1とは相性が良いことは間違いありません。ただ同じようにSnapdragon Sound S3使用を表明しているものの、LE audio対応はグレーのままだったVivo TWS 4 Hi-Fi(日本未発売)なんかはClassic Bluetoothでの接続は問題なくできるものの、LE audioモードでの接続はできませんでした。
また間違いだと嫌なので明言はしませんが、現TWS界の代表選手である某1000xxx5などの非Qualcommチップを採用しているであろうTWS/OWSはClassic Bluetoothでの接続はできるもののLE audioモードでの接続はできませんでした。しかもAACやLDAC接続をMX-C1がサポートしていないため、某1000xxx5はSBCのみでの接続となりました。

aptX Liteとは何者ぞ
今回7~8機種の接続を試してみましたが、やはりというか「存在するんだな」と思ったのが、”業界標準”であるはずの『LE audio/LC3』に相性があったこと。今回のようにQCC系のチップを積んだUSBドングルタイプのBluetoothトランスミッターと相性が良いのはSnapdragon Sound対応のチップを積んだTWS/OWSになりがちな気がします。
しかもよくよく考えると現役最新のUSBドングルタイプのBluetoothトランスミッターってほとんどがQualcommチップを積んだものばかりってことに気が付きました。今回のMX-C1もそう。そうなってくると前述のNUARLさんの中の人の言葉が再び身に染みます。
~ ただし、このコーデックはSnapdragon Sound対応機器同士でないと動作しません。
“LC3″という業界標準のはずのカテゴリーに表示されている”aptX Lite”というコーデック(プロファイル)がQualcomm系じゃないと接続できないという矛盾。またこのもやもやと遭遇してしまいました。
実際このaptX Liteで接続できたCreative Aurvana Ace 2を”Bluetooth ワイヤレスイヤホン/ヘッドホン 遅延テスト 60FPS“で確認すると、目視ではほとんど遅延を感じませんでした。モードを変えてSBCやaptX系で見ると明らかに音が遅れて聞こえます。ゲームはあまりたしまないのでFPSでどうの、というような回答ができないのはご了承ください。
aptX Lite: 確かに低遅延でPCなどとTWSなどの受信機側を繋ぐことはできるでしょう。というか今回”aptX Lite”で接続したTWS/OWSで低遅延を実際に確かめることは出来ました。でも、
- 「何故LC3のままではいけなかったのでしょうか?」
- 「何故他社チップが接続しにくいコーデック(プロファイル)を今、”LC3″にぶち込むのでしょうか?」
正直aptXと名が付くからって音質が上がっていたなどは感じられませんでしたし、LE audio (LC3)の限界音質的なものを感じました。音質向上であれば準業界標準である”LC3+”を業界標準的なものとして広く提供するのがほぼほぼBluetoothチップのデファクトスタンダードになりつつある企業の矜持であるべきかと思います。今どき他社オミットの製品は、、、という気がします。

まとめ
aptX Lite、現時点ではスペックやメリットなどが不明なため確実なことは言えませんが、本日時点での個人的定義は、
aptX Liteとは、従来から接続できていたのQualcommチップ同士のLC3接続に、マーケティング的な名称をあえてつけただけ
なんて感じました。間違いだったら付してお詫び申し上げます。m(__)m
とはいえ、発売当初はTaoBaoなどの中華ローカルでしか販売されていませんでしたが、今やAliexpressなどでも$39.9ほどで一斉に発売され始めました。きっとニーズがあるのかと思います。群雄割拠のBluetoothトランスミッター界に”aptX Lite”の名と共に割って入ってきた低価格ドングル。皆様もおひとついかがでしょうか?
今回はこの辺で!
日本国内で無線機能(Bluetooth 等)を使用(試用)する場合、つまり実験目的で使用する場合は、総務省「技適未取得機器を用いた実験等の特例制度」への届出が必要です。ご注意ください。
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