LHDC192 つまり中華スマホがなくても24bit/192kHzをワイヤレスで体感できるドングルを恐らく日本初レビュー?!
そもそもLHDCって?
SBCやAACしかコーデックが対応していないごく普通のBluetoothワイヤレスイヤホンやワイヤレスヘッドホンは16bit/48kHzまでのビット深度/サンプリング周波数までの対応。そこにAndroidスマホなどでいわゆる「ハイレゾ(ワイヤレス)」としてaptX AdaptiveやLDACがもてはやされているのが昨今の流れ。それ以外にもサムスンやファーウェイなどの独自コーデックはあるにはあるものの独自であるがゆえにさほど浸透はせずに、結果iPhoneのAAC、AndroidのaptXとLDACが3大メジャーとなっている。ところがもう一つ勢力を伸ばしつつあるコーデックが一つある。それが今回紹介するLHDC:Low Latency High-Definition Audio Codecだ。
広がりつつあるLHDC
中国スマホおよび音響機器界隈で広がりつつあるのがこのLHDCで24bit/96kHz対応という、ほぼほぼLDACと同等レベルのパフォーマンスを提供する。しかしまだXiaomiやNubiaなどの中華スマホメーカーやEdifier、Hifimanなどの中華音響機器メーカー、OppoやOnplusなどのスマホと音響機器双方を手掛けているメーカでの採用にとどまっており、欧米や日本の音響マニアでも聞いたことがないという方も少なくないことであろう。昨今ではお洒落なNothing (England)が採用して少しずつ勢力を伸ばしつつあるように見えるが、もともとAndroid オープンソース プロジェクトのひとつなのでaptXやLDACなどのように一つのメーカー色に縛られない利点があるのかもしれない。
LHDCv5
そのLHDCの最新バージョンがLHDCv5と呼ばれるもので最新の中華スマホや中華ワイヤレスイヤホン、Nothingのイヤホンでも採用され始めている。その何が注目を浴びているかというとaptXやLDACを超えたサンプリング周波数192kHzに対応していること。語弊があるかもしれないが旧来の44/1/48kHzなどの圧縮音源で粗くなっていた原音との開きを LHDCではその数倍の緻密さでカバーすることによって音の繊細さ引き出して、より自然な滑らかさに近づていることになる。 LDACなどの24bit/96kHzでもハイレゾの実力を感じてきている今、バージョンを重ねてv5となりさらなる緻密さをうたう192kHzのサンプリング周波数まで届いたLHDCが少し気になってきている人も少なくないはずである。
LHDC ONE
しかし冒頭でも申し上げた通りLHDC対応のスマホは中国メーカーのものがほとんど。iPhoneはもちろん、XperiaもGalaxyも対応していないため、現状LHDCに接することができる人はごくごく限られており、さらにLHDC対応のワイヤレス音響機器を手に入れる人もさほど多くないことから少し遠い存在と感じている人は多いであろう。しかしここにきてステージが変わってきたのである。昨年末~今年初めにクラウドファンディングでLHDC ONE、LHDCしかもLHDCv5に対応した192kHz対応のUSBドングルが世に出てきたのである。そしてこの夏秋に中国でついにLHDC ONEが市販されることになった。中華スマホを持たずともスマホにUSBをさしたり、PCやUSB対応のMac。iPhone (iPhone 15~)で最高レベルのハイレゾワイヤレスが簡単に楽しめるようになったのである。
LHDC192対応ワイヤレスイヤホン・ヘッドホン
しかもさらにLHDCv5/192対応のワイヤレス機器も徐々に増えてきた。日本でもかなりのヒットとなりEdifierの名をワイヤレスイヤホン界隈に知らしめたEdifier Neobuds Pro 2。スマホやイヤホンにデザインを調和させてきたNothingもNothing (ear)でLHDC192に対応してきた。ロゴを見てなんじゃこれ?と思った人もいたであろう。ヘッドホンでも先日紹介したEdifierのインフィニティミラー搭載ヘッドホンEdifier Halo SpaceがLHDC192対応を謡い、さらにEdifierはイヤホンのNeobuds Pro 2およびヘッドホンのHalo SpaceではLHDCの空間オーディオ技術LHDC Xにも対応させてきている。このようにまだ数は少ないが少しずつBluetoothイヤホン・ヘッドホンのポテンシャルを最大限に高めるLHDC192対応が増えてきているようだ。
外見・スペック
ということで、じゃーん。届きました。
今回はTaoBaoから購入。300元ほどなので、$45 / 6,000円ほどのお買い物。
小ぶりな箱に詰められた中身を見ていきましょう。手にした所見の感想は、「軽い、少し大きい、うすべったい」。 先日ご紹介したFIIOの最新USBドングルFIIO BT11やこれまでのハイレゾ対応USBドングルたちが割と小さかったのでそれに比して大きいと感じたわけだ。しかしスマホに刺しても邪魔にならないように横長かつ薄くして工夫をしているようだ。本体はいわゆるプラスチッキーで見た目に比してかなり軽いと感じる。ちょっとちゃちいけど。
FIIO BT11と違ってこのLHDC ONEにはボタンがついており、2度目以降のペアリングなどに安心だ。一方でこれまでのハイレゾUSBドングル同様にLCDなどがないためLEDの色で接続サンプリング周波数などを見極めなければならない。また他のハイレゾUSBドングルとの差別化要因として3.5mmのアナログイヤホンアウトプットがついているのが面白い。Bluetoothワイヤレスの限界を見せようとしている機器にアナログ出口がついているのだ。メーカーも単に音をスルーさせてるだけで特にいじってません(テヘ)と言っているのでおまけ程度と思ってください。
スペックは以下の通り、
- Bluetooth バージョン: V5.3
- コーデック: SBC / LHDC V3/LHDC V4/LHDC-V5
- サンプリング周波数: 24 ビット 48/96/192 kHz
- 入力: USB Type-C- UAC2.0
- 出力: Bluetooth、アナログ 3.5 mm AUX
- 遅延モード:LHDC-LL
- W43mm x H20mm (30mm-USB含) x D7mm 重さ6g : すべて実測値
スペック的な注意点としてはコーデックがSBCかLHDCしか対応していないところ。Bluetoothを名乗る掟としてのSBCはあるものの、AACやaptX、LDACには潔くw対応していません。 PCへの接続規格はUSB Audio Class 2.0。UAC1.0が96kHzまでの対応なので納得だ。しかもというか ”しかし”でもあるがWin10以降の標準ドライバで動く便利さと裏腹に残念ながら専用アプリはない。あったらなお良いのだが。超低遅延モードのLHDC-LL規格にも対応とのことだが今回は試すことができなかった、ご了承願いたい。また、LCDなどがないためLEDの色で接続サンプリング周波数などを見極めなければならないのは前述の通りだ。(下図参照)
試聴・他のコーデックとの比較雑感
それでは試聴と行きましょう。スマートフォンはこのブログで良く使用しているXiaomi 14 Ultraでこのスマホ自体、これだけでもLHDCv5対応なのだが 今回は基本ドングルを付けて試すこととする。まずは上記でも挙げたEdifier Neobuds Pro 2が手元にあったのでワイヤレスイヤホンでの音質チェックはこれに。Neobuds Pro 2はLDACにも対応しているのでLDAC 96kHz vs LHDC192が試せるのがミソ。試聴楽曲は192kHzを試すため手元にあったローカルLDACファイルからBoz ScaggsのWe’re All Aloneを。96kHzまでであれば最近の楽曲も少しはあるのだが、192kHzエンコードはほとんどないのが現状。合わせてハイレゾストリーミングチェック用にTidalの96kHzの楽曲も試してみた。それぞれハイレゾプレーヤーであるUAPPを使用。TidalのみTidalアプリでも試した。
まずはいつも聞いているLDACベースでローカル楽曲とストリーミングを。まぁ悪くない、というか数十年前にレコードで静電気と闘いながらテープに録音したBoz Scaggsがここまで良い音で聞こえるのだからそもそも大満足w。続いて今回の主役LHDC ONEをスマホに接続しNeobuds Pro 2に接続。と、その前にサイトやマニュアルでも注意喚起をしていたのだがこのLHDC ONEからはイヤホンのコーデックを動的に変えることはできないため、LHDCで接続するためにはまず先にスマホに直接接続してアプリでコーデックを変更してからLHDC ONEに接続してね、と。
前置きはここまでで仰せの通りに事前にLHDC接続設定にしておいたNeobuds Pro 2をLHDC ONEに接続。LEDの色も24bit/192kHz接続を示す点灯であることを確認。で。。。肝心の音質は???。。。。。おや、いいぞ。音の厚みが重量感が違うかも。。。プラシーボも多分にあるかとは思いますが、念のため3回ほどあっちやこっちやと試してみても同じ感想です。というか逆にLDACが少し薄っぺらく聞こえてきました。これはLHDCのポテンシャル? それともLHDC ONEの力? これを確認するために念のためXiaomi 14 Ultra直接 LHDCv5接続をして聞いたのだがスマホにイヤホンを直接接続して聴く音もLHDC ONE経由で聴く音もほぼほぼ同じように聞こえる。私レベルの堕耳だと違いが判らないくらい。つまりはLHDCのポテンシャルをLHDC ONEがうまく引き出したということなのかと。
調子に乗って24bit/192kHzレベルだったら有線駆逐でしょ! とばかりに勇んで有線との音質比較もついでに。人気のUSB DACであるFIIO KA17に、EST(静電)ドライバー内蔵で高音が魅力な水月雨VARIATIONSをつないでで試聴を。双方ともまぁまぁ庶民にも手が届く価格帯でそれなりに評判のいい若い中堅といったところの位置づけでしょうか、こちらでBoz Scaggs聞いたところ。。。ん?。。。念のため同じく192kHz音源のChicagoのHard to Say I’m Sorry – Get Awayも。。。。。お。。。。。うーん。。。。。。あーぁ・・・・・ふう。。。さすがに有線の圧勝でした。圧勝というと少し言いすぎですが、臨場感というか暖色感というか有線の方が有機物的な生きている音だったこと。もちろんLHDC192もすごいのは間違いない。今回は音源の都合で70-80年代Pops/AORでの試聴だったが楽曲ジャンルによってはLHDC192の乾いている感とかスピード感とかが生きることもあるかと思いますし、明らかに負けではないと。線無いのにですよ、すごいぞワイヤレス。
ストリーミングでもほぼ同じような感想。LDACとLHDCv5ではLHDCの方に音の厚みが感じられて好みでしたね。あくまでも千差万別・十人十色の感想の一つですが。ただ一点これは利点かも♡とおもったことが。ワイヤレス接続ではあるもののスマホとはUSBを経由して繋がっているのでスマホからはUSB DACの一種(間違いないけど)と認識されている。 つまり「これはワイヤレスじゃないんだね!」とPCは認識して、UAPPやTidalアプリはUSB DAC経由のハイレゾを普通に流す体で動いている様子。 何を言っているかというと、よくワイヤレス経由でアプリに接続しようとすると「Bluetooth接続は圧縮してるよ!」的なメッセージがでてモヤモヤするのだが、LHDC ONE経由だとそれがない。内部回路的にも出音的にもその違いが実際に現れるのかはわからなかったが、LHDC ONE経由だとこの表示が出ないで音楽を楽しめるため、精神衛生上も「ハイレゾ聴いてるぜぃ」感が損なわれないのでモヤモヤせずに気持ちよく試聴することがでたのがうれしい。ちっちゃなことだけど、これ結構重要。
お次はPCにLHDC ONE経由でワイヤレスヘッドホンであるEdifier Halo Spaceを接続。方やLDAC接続はWindows標準のBluetooth接続をLDAC対応にするAlternative A2DP Driverを使用。今まではPCにLDAC接続するためには別途ハードウェアが必要だったのが、1000円前後でソフトウェアだけでLDACでの接続が対応するのでとても便利。1台当たり$9.99、って少し値上げした? で、視聴に戻るとLHDC ONEへの接続は問題なくLEDの色判別で24bit/192kHz接続ができた模様。これも上記イヤホン接続と同じ楽曲同じシチュエーションで試聴たが、感想もほとんど変わらない。むしろヘッドホンで包み込まれているためか、LHDCの音の厚みはさらに顕著に感じることができた気が。いままでは「LDACで最高!」といっていたのですから信憑性のない発言にも聞こえると自覚はしておりますです。
まとめ
想定より少し文量がかさんでしまいましたが、いかがでしたでしょうか。 FIIO BT11が恐らく間もなく日本でも発売されることになるはずであるし、Creativeからも人気製品BT-W5の後継BT-W6の登場が告知されている。BT-W6はまだわからないが、192kHzに対応したLHDC ONEも、aptXLossless接続に対応したBT11もそれぞれ次代へのエポックとなる製品であることは間違いないかと。さらにライバル企業がしのぎを削ってさらなる高性能な製品が出てくるとは思うが、プラシーボ?という疑念やハイレゾを聴いている満足感などの思いに触れながら、スペックに踊らされずに「音を楽しむこと」を忘れずに行きたいものですね。
それでは。
あとがき
実は今回LHDC192接続チェック用の新参として”贝壳王子“という自分的には初耳の中国メーカーのX3PROというセミインナーイヤー式(apple airPods 4的な)商品を仕入れていた。インナーイヤー式でLHDC192対応、LE Audio対応、低遅延ゲームモード搭載と割と意欲的な製品だったのだが、接続テストでどうしても192kHz接続ができず仕舞い。結果、48kHz接続まで。販売店に質問は入れたのだが、技術者から回答しますねーといったまま返答がないので、今回は見切りでテスト機材から外したという経緯が。結論分かったりしたらまたどこかでつぶやくようにしますね。 では ほんとに、それでは!
技適マークがない無線通信機器を日本国内で使うと電波法違反になる恐れがあります。特例制度(技適未取得機器を用いた実験等の特例制度)を利用し、ウェブサイトでのレビューや実験・試験・調査によるものが対象であることを明示した上で総務省に届出をすることによって合法的に技適マークがない無線通信機器を使うことができます。ご注意ください。
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