概要説明・開梱レポートの前編はコチラ
本編に入る前にBTR17のプロモ映像がこちら。かっちょいいですよ。
いよいよ試聴、、、その前に各種モードの整理
いよいよ試聴の段にと行きたいところなのだが、このBTR17はシンプルなDACと違って、ベースは”Bluetooth DAC” であり、かつ今回はDACとしてのパフォーマンスを高めるための “Desktop Mode” と “外部補助電源サポート” という付加価値的な要素が加わっている。
が故に、ちとこんがらがちである。。。
スムースでスマートな試聴をするためにはこの「こんがらがり」をクリアにしないと始まらない。まずはこれらのモードと使用シーンを整理していきたい。
各種モードの違い
各シーンやモードの仔細に入る前に、まずこのBTR17に備わる「各選択肢」を整理してみる。少し表現が曖昧にみえる言葉もあると思うが、基本的にFIIOの説明に沿って使用(リンク先で言語を中国語に変更)しているので了承いただきたい。
- ポジションスイッチ
- PCモード
- BTモード
- PHONEモード
- D.MODEスイッチ (DESKTOPモード・スイッチ)
- ON
- OFF
- 2種類のUSBポート
- 有線デコード・充電ポート
- 外部独立電源接続ポート
使用シーンに合わせて一発で選択肢から選ぶという方式ではなく、これら3種類のユーザー選択それぞれから複数の選択肢を選ぶ形となっているので、単純に計算すると 3 x 2 x 2 = 12種類 の個別選択ができることとなってしまう。ありがたいけど、よくわからなくなる、、、みたいな。
ただこの12の選択肢の中には「意味がない」選択肢もあるので、そこを注意しつつ確認していきたい。なおこの図で記載してあるPC1やPH1などの管理番号は当サイト独自のものなので誤解なきよう。
ポジションスイッチ
まず大雑把に言って使用シーンを選ぶ「ポジションスイッチ」がある。PC/BT/PHONEの3つから物理的トグルスイッチで選ぶ。(購入時はデフォルトではBTだった) それぞれのポジションの意味をFIIOでは以下のように説明している。(中国語FAQをGoogle翻訳で引用)
- PC モード: 有線デコードモード。主にコンピュータに接続する場合に使用されます。
- BT モード: Bluetooth 受信モードに入り、携帯電話または他の Bluetooth 送信デバイスから信号を受信します。ワイヤレス デコードは無制限です。
- PHONE モード: 有線デコード モード。デコード効果は PC モードと同じです。異なる点は、BTR17 の USB は充電や電力供給を行わず、独自のバッテリーを使用して電力を供給することです。
このBTR17のメイン用途であるBluetooth DACの使用シーンを現す「BTモード」は単純で分かりやすい。ワイヤレスでコードは無制限です。という表記の意味はいまいちだが。
そして少しこんがらがちなのが、「PCモード」と「PHONEモード」。PCへの接続・スマホへの接続という意味ではイメージが付きやすいが、PC・スマホそれぞれに逆のモードでも接続できるため少しわかりにくくなる。
ただその点は上記でも書いてあるとおり、”PHONEモードではBTR17のバッテリーを優先的に使用”して、”PCモードではデバイスに接続しているポートから電源供給を受ける”という大きな違いがあるとのことだ。これには大きく分けて2つの意味があると考えられる。まずは電源消費の観点:PCモードではポートからの電源供給でBTR17を駆動させるため、デバイスからの電源が豊富な場合は使用時間を気にせずにBTR17を使用できる。一方(一昔前のDACがそうだったのだが)この使い方をスマホで実施する場合スマホのバッテリーを急激に使用してしまうために、スマホの稼働時間を飛躍的に狭めてしまうのだ。ゆえに「BTR17のみのバッテリーでBTR17を使うというPHONEモード」はスマホ使用時にスマホからの急激な電力の吸い上げをせずに「できる範囲内」(BTR17のバッテリーの制限内)でいわば安心して使うという使い方だ。これが初めの電源消費の観点での選択。
もう一つがいわゆるオーディオマニアが気にするところの「クリーンな電源」という観点かと思う。PCのUSBポートから電源をとるとジッターや歪みなどの微細な音の劣化を生じさせることがあるというもの。PC内部には様々な機器やチップが渦巻いているためそこからのノイズが載ってしまうというものだ。故にUSB DACをPCで使う場合もPCから電源供給を受けずに独立した言々ポートから独自に電源を受けるという選択をとる人たちもいる。これと同じように「PCモード」だと電源による駆動時間を気にせずに使用することができるが、PCからのノイズを拾う可能性もあるのでそこはあえてPCからの電源供給を断ってPCに接続していたとしても「PHONEモード」を選択して「独自バッテリーの使用」でノイズ侵入を少しでも防御するという選択肢だ。本当にノイズが載るのか否かはオーディオオカルト的な話になるのでここでは避けておく。
2種類のUSBポート
上記順番でいうと一つ飛んでしまうのだが電源供給という視点で先にこちらを解読しておきたい。このUSBポートの選択肢はほかの2つと違ってトグルで選ぶのではなく、「物理的に外部独立電源を利用するか否か」である。データの入出力を伴わい”POWER IN”と刻印されているUSBポートに電源からのUSBケーブルを差すか差さないか、の選択肢である。これは割と単純だ。前述の通りBTR17は本体内にバッテリーを積んでいるため別途外部電力供給がなくてもバッテリー容量の制限内で単体で動かすことができる。もう一つは上記の「PCモード」 を選択して、PCやスマホからの電源供給を受けてそちらの電源を利用しながら使うというもの。但しこれも上記の通りスマホ接続時に「PCもモード」でスマホから電源を受けながら使用するとスマホの電源を急激に使用して、スマホの稼働時間を狭めてしまうというデメリットがある。これを防ぐために「POWER IN」ポートにUSB充電器やUSBバッテリー経由で外部電源を補って使用するというのが理由だ。これによりBTR17単体で使うよりもBTR17の稼働時間は伸びる。
ただし、あまりスマートじゃない、という見方もある。本来スマホに予備的に接続するUSB DACはそれだけでも余計な付属物となって邪魔と言っちゃ邪魔な存在なのだが、それにさらにUSB電源ケーブルと外部バッテリーを接続して使うとなると、「スマートなフォン」じゃなくなっちゃうじゃないの、ということである。確かに便利だがさらにケーブルが増えるのはあまりきれいじゃない。
これを少しだけ解決するためにUSB DAC単体で人気が高いFIIO KA17にはオプションでKA17にしっくりなじむ独自バッテリーを現在開発中とのこと。これであれば時間は限られるものの余計なケーブルは増えないので、「準スマートなフォン」くらいではいられるのかもしれない。
D.MODEスイッチ (DESKTOPモード・スイッチ)
今回の目玉でもあるこのD.MODE。上記2つの選択肢と密接にかかわってくる。ざっくりと言うと「D.MODEを選択することでBTR17に更なるパワーを与えて音質モンスターに昇華させる」ものなんだと理解している。FIIOの中国語FAQ等では以下のように説明されている。
D. MODEスイッチ
電源を入れた後、USB ポートが外部電源に接続されている場合、BTR17 は充電されず、バッテリーは消費されません。オンになった後、BTR17 の出力電力と電圧振幅が大きくなります。
更なるエナジーを、である。少し補足すると、「POWER INポートに外部電力を供給しつつ、”D.MODE”スイッチをオンにする」ことでBTR17に余力を与えて更なる音質の強化が図れる。音の出力に余裕を持たせる、というものである。一方「POWER INポートに外部電力を供給しつつ、”D.MODE”スイッチをオンにしない」とBTR17への音質強化は図らずにBTR17に電力を充電させることになるそうだ。本来であれば「スマート」にBTR17を単体で使いたいのだが、バッテリーが減っているためにBTR17を使いつつ電力補給もするというのが「POWER INから電源供給を受けつつD.MODEをオフ」というのが使い方であろう。
もう一つの視点もあると推測もできる。(ま、記載もされているが)一般論としてなんとなく理解しているのが、「デバイスをバッテリーを使って動かしながら充電するとバッテリーを痛める」問題である。よくスマホも充電しながらヘビーに使うとスマホの寿命を縮めるよ、ってやつである。D.MODEスイッチをオンにすると外部電源からの電力は「バッテリーをバイパス」してBTR17本体への音質強化に使われるのが今回の目玉機能でもあるそうで、これであれば高価なBTR17を良い音のまま少しでも長く使い続けることが期待できるのだ。
ここでお分かりの通り、基本的に外部電源供給がないD.MODEはあり得ないということとなり、上記想定シーンからいくつかが削られることになる。USB外部電源なし + D.MODE オンはあり得ないのだ。
細かくて恐縮だが、これらのことを踏まえての仔細の使用シーンがこちら。黄色バー部分
と、踏み込んだ仔細の使用シーンの想定をしてもなお、上記図でいうところの”PC1”や”PC3″の意味、つまりPCモードを選択しつつ外部電源を利用する際に、”PH1″や”PH3″との違い、つまり「外部電源接続時にデバイスからの電源供給をすることの意味って何さ?」という点が実はまだ腑に落ちていないことを付記させいただきたい。この部分に関してはもう少し調べて分かり次第追記していこうと思う。
ということで前段が長くなったけど、ようやく試聴雑感
これらのいくつかのモードや選択肢のパラレル具合がBTR17を手にした瞬間からモヤモヤしていたので、時間をかけて自分の中で整理するためにも紙面を割かせていただいた。
ということで試聴雑感である。世に数多君臨されているその手のオーディオ解説者の方々と違ってあくまでも一般的な感覚しか持たない堕耳のつぶやきであることは前提としてご理解いただきたい。また例えばUSBケーブルを変更しての音の違いなんかも基本的には理解していないので、そういったデモは省かせいただくことも了承いただきたい。それでも上記使用シーンごとに少し雑感を述べさせていただく。
なお試聴にはイヤホン代表として水月雨(Moondrop) Variations を使用、静電ドライバー採用なので鳴らしやすいイヤホンではないはずです。 ヘッドホン代表としてはSennheiser HD 660S を使用、先代なのでインピーダンスは150Ωですが、それでもポータブル機器で使う用途ではあまりないヘッドホンの部類かと思います。スマホはXiaomi 14 Ultraを使用、基本的により一般的なLDAC接続で試聴しています。PC接続は自作のWindows 11マシンです。スマホではUSB Audio Player Pro、PCは旧版のAurirvanaをFIIOのASIOドライバー接続で96kHs FLAC音源やSACD音質レベルのdsf音源などをUAC2.0接続および基本イコライザーオフで聴いています。
Bluetooth接続 (D.MODE使用パターン / BTR17単体でのシンプル使用)
(以下、XX/100は100段階音量のどのあたりで自分のしっかり聞く際の音量レベルを表している)
Valiations: BT4 18/100、BT1 16/100
D.MODEにすると歯切れがよくなり、高低ではなく前後系に音が増幅された感じ
660s: BT4 28/100 BT1 20/100
D.MODEにすると出音の力強さが違う。気が付かなかった息遣いとかも聞こえるようで、本気を出したぞこいつという感じ
スマホ USB接続 (D.MODE使用パターン / BTR17単体でのシンプル使用)
Valiations: PC4 24/100、PC1 20/100
D.MODEにすると低音の迫りが生々しくなる。知らなければそれで済んだのだろうがD.MODEにすると音が20%ほど層を増した感じになる。
660s: PC4 27/100 PC1 23/100
やはりBTに比べて肌理細やかさが感じられる。D.MODEにすると力強さが段違いになり、音が押し寄せてくる感じ。
PC接続 (D.MODE使用パターン / BTR17単体でのシンプル使用)
Variations: PC4 24/100 PC1: 19/100
660s: PC4 31/100 PC1: 25/100
正直D.MODEのON OFFの顕著な違いは双方ともスマホほど感じなかった。というかD.MODE無しでも素性の良さなのかASIOでのまじりっけのない音が結構響いてきた。D.MODEの方が音に厚みが出るものの。
試聴雑感おまけ・あとあじ
デスクトップDACじゃなくてもこれでいいんでない?って感じ イヤホンやヘッドホン使用の場合。試しに家にあるFIIO K9AKMも同じ曲、同じイヤホン・ヘッドホンで試してみた。さすがにK9の方が余裕のある音を鳴らしている感があり、かつ比較して聴いてみるとK9AKMのあったかみのある音味に対してBTR17の方がクールな音なんだな、って気が付いた。ESS vs AKM なのか??
余談だがD.MODEをオンにしていた際に手が触れてしまって、たまたまSiaの”I Forgive You”という女性ボーカルの熱唱系というか絶唱系が流れてきた。あまりの迫力にそのまま聴き入ってしまった。音の大きさや音圧ではない迫りくる感じがすごかった。なんだろう、こういうのって。
なおD.MODE稼働中(音量レベル20以下の場合のみ)にPHONEモードからPCモードに切り替えた際に音量レベルが自然と4下がる事に気が付いた。音圧とかも下がるので電源ソースが増えるからその分音のレベルを合わせるということでもないようだ。これも内部処理的にきっと何か意味があるのだろう、当方では理由は不明だった。
まとめ – 小さな巨人よ。
2つ感想がある。実はこの2つの感想は相反するというか矛盾ある感想なのだが偽らざる素の気持ちなので敢えて記載してみたい。
- もうBluetoothでいいんじゃない? 無線の時代ってやっぱりくるんだろうな。。。
- 有線で聴く音の良さを再確認。 やっぱ音を独占している気持ちよさって感じ。
1は前編の冒頭でも書いた通り、初めにBTR17をBT経由で聴いたときの結構衝撃的な感想。TWS:完全ワイヤレスイヤホン等で聴く音楽のどこか我慢している感が、BTR17で聴くワイヤレス音楽では全くなくて気持ちよく音楽を楽しめたという気持ち。もちろんBTR17のようなBluetooth DACはワイヤレスの気軽さと有線接続の安心感のいいとこどりであることがこのような期待以上の満足感を感じる理由なのかもしれないが。
一方、2番の有線でつまりはBluetooth DACとしてではなく、USB DACとしてBTR17を利用した、特にPCで音楽を聴いたときの押し寄せるような感情がこれだった。「やっぱ有線っしょ」みたいな。これも机の大きな部分を占めるデスクトップDACやピュアオーディオで使われるDACなど経由ではなく、手のひらサイズのUSB DACでここまでの音が聞こえたという期待を超えた感動が故の誇張された感情なのであろう。思い起こせば確かにFIIO KA17を始めてPCに繋いで聞いた時も同じような沸き上がる感動を感じたことを思い出した。
いつの時代も「小さな巨人」には心躍らされるのだと実感した、冬の訪れを感じる11月の週末でした。
それでは今回はこの辺で、ちょっと急ぎ足で疲労困憊ってのもあって今回はここまで。 何かアップデートなどがあり次第追記していきます。思い込みなどによるサイレント修正もしていくんだろうな、、、今回。
それでは!
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