Eppfun AK8675MAX1
全国のトランスミッターファンの皆さん、そして全国のLE audioフォロワーの皆さん、こんにちは。 日々良い音の伝送に明け暮れている毎日のことと存じますw 先日最新トランスミッター検証第一弾ということでEppfun AK3040Pro Ultraという最新小型LDAC/Losslessトランスミッターを昨今の人気トランスミッターのライバルたちと比較検証させていただきました。やはりそれなりに引き合いが多かったようで順調にアクセスをいただいているようです。そして今回はその第二弾として同じメーカーの小型デスクトップタイプのトランスミッターを紹介させていただきたいと思います。今回のトランスミッターはただのBluetoothトランスミッターじゃありません。あの鬼門のLE audio伝送を主題としているトランスミッターなのです。
BluetoothとLE audio(諸先輩方は読み飛ばしちゃってください)
現在世界中にあるブルートゥースオーディオ製品の台数ってどれくらいあるか想像つきますか? 昨年2024年に開催されたBluetooth SIGのレポートによると2024年現在で10億台強あるんだそうです。世界総人口は80憶人と言われているので単純計算で8人に一台、数字遊びレベルの情報をお許しいただければChatGPTさんに相談しつつ世界のブルートゥースオーディオ製品のターゲット層を生産年齢人口総数における中間層~富裕層と仮定してざっくり計算すると30億人、つまりもう3人に1台はBluetoothオーディオがいきわたっていることになり、かなりマチュアな製品カテゴリーになってきていることになります。次なるブレークスルーが求められている市場といっても過言ではないでしょう。
そのブレークスルーとなるともいわれているのが今回の大きなタイトルというかテーマの一つでもある『LE audio』という技術。なんせ、今のBluetoothは実はすでに『Bluetoothクラシック』と呼ばれているっていうんですから、新たな時代の到来が期待されちゃいます。現状はまだ数パーセント以下の普及とのことだそうですのでこれからの市場のオポチュニティとしては凄いもんになるでしょう。LE audioのメリット等は以下の通り

簡単に言っちゃうと『より良い音を、低遅延で、多くの人に』ってことなんだと思います。現状の少しいい音になるとブチブチ切れちゃう電波をもっと効率的に使って切れにくくしつつ、さらに今後スループットが現状の4倍幅になる技術も確立されているということで将来的には現状のハイレゾを超えるウルトラレゾ、ハイパーレゾなんてのも期待できちゃうんだと思います。
期待は大きいのだけれども。。。
このように良い音を聴くためにはもはや有線はいらなくなる、、、って世界がすぐ来そうなものなのですが、そんなに甘くはないのが現実。数年前からワイヤレスイヤホンの人気機種がLE audio対応となったり、対応表明する機種が増えたり、それを伝送する母艦や手段としてのLE audio対応スマホやトランスミッターも徐々に増えつつあったりするのですが、技術転換の端境期なのか、結構LE audio界隈は混とんとしちゃっています。LE audioという言葉を聴くと期待感とは裏腹にちょっと身構えちゃう自分もいます。そう、現状はユーザーサイドではいかんともしがたい『限られた情報の中での、機種間相性問題』ってのに振り回されちゃっているんです。。。

遅々として進まない相性問題解決への道、、、
まず前提としてこのLE audioですが、『これがなくっちゃこまる!!』って存在じゃないってのが大きい気がします。まず低遅延に関しては特にゲーム界隈で大いに求められている問題ではあるものの、現状他の技術や送信側と受信側の一対のセット販売で低遅延を売りにしている商品が結構世に出てきています。汎用的なもので利益率が下がるよりも囲い込みで利益を積めるのであれば、『互換性よりも独自性』を売りにしちゃうってのが世の常。高音質も恐らく現状の技術の範囲内ではできるレベルの高音質であるLDACやLosslessでそれなりに満足しちゃっていたり、それ以上を求める層にはまだまだ『有線信仰』的なものもあったりして、そこまで急激に急ぎで求められちゃっているわけではない背景があるってこと。そういった背景や前提の上でQualcommやAirohaなどのチップメーカーが標準化にプラスして独自性や先進性を加えているのか、異なるメーカーや世代間での接続の相性が発生しちゃって、かつどの製品にどのチップがなんてのも公開情報じゃなかったりするのでユーザーサイドは同じ「LE audio」対応製品を用意しても、蓋を開けたらがっかり「繋がりませーん」状態になりがちだったりするんだと思います。以下が2月中旬現在のCreative BT-W6の動作確認リスト。主要ワイヤレスイヤホンに対してのLE audio対応状況が一番右の列。見よ、このXの多さw

LE audioの名を前面に出したトランスミッター発売
そんな中で今回ご紹介するEppfun AK8675MAX1はメインコピーや商品特徴紹介として『LE audio Transmitter』を前面に出してきた意欲作。確かに世に多く出回り始めている『Bluetooth Transmitter』よりは目を引くしね。ただそれだけに期待と不安が入り混じるモヤモヤした空気感が漂うのも事実。私はAliexpressで見つけて取り寄せましたが、もう既に日本でも販売を開始していて、つまりは日本の技適も取得済みってわけ。値段もメジャーな小型USBトランスミッターが軒並み7-8000円程、デスクトップタイプのトランスミッターで一番名の知れたFIIO BTA30 Proに至ってはAliexpressで100数十ドル、日本だと20000円弱もするのに対して、このAK8675MAX1はAliexpressで30ドルくらい、日本でも5500円と破格値てのだから見逃せない。では気になる相性や使い勝手を見ていきましょう。

オープン・ザ・ボックス
パッケージと同梱物はコチラ。

商品名はないのに、その代わりにでかでかと『LE AUDIO』と書かれたパッケージに、充実したケーブル類がありがたい同梱物。本体は名刺入れや定期入れくらいの床面積、ただその見てくれに比べて軽いのなんのって。外装は完全プラスチッキーでFIIOのそれと比べたら重厚感や所有欲を満たす雰囲気は全くないですw
本体操作面と裏面のIOポートはこんな感じ。

操作面中央左
こちらは状況表示インジケーター。入力ポートと接続コーデックをLEDで表します。
操作面左下
こちらの物理ボタンで再ペアリングや入力ポート指定、音量を操作します。
操作面右下
接続時のモード表示コーナーで 左からBA(BroadCastモード)=いわゆるAuracast、LE(LE audio接続)、BT(Bluetooth Classic接続)それぞれが接続成功時に点灯し、BTのところはペアリング時に点滅します。
本体側面
このモード切り替えは本体側面の物理セレクター(兼電源スイッチ)で選択するのですが、つまりはこの製品『BTトランスミッター』であり、『LEトランスミッター』であり、『Auracastトランスミッター』でもあったのです。やるじゃん。
少し戻ってコーデックのところですが、旧来のBluetooth接続の際は”CODE”というLED部分の色が変わってそれで接続コーデックを判別します。色の判別は以下の通り:
[SBC深青、aptX薄青、aptX HD緑、aptX adaptive high quality黄 aptxadaptive low latency紫]
またその横の3つ”Lossless” “LE-LL” “LE-HQ”は『デバイスは対応するLEオーディオフォーマットで動作中』 (説明書まま記載) とのことで恐らくLE-LLが低遅延モード、LE-HQが通常のユニキャストモードのLE audio、ただ一番左のLosslessは不明です。はじめ見た時はaptXのLosslessのことだと思ったのですが、どうも違ったようです(後述)
なお、一番右のLEDの⚡イナズママークは点灯が『充電中』を示しているとのことで、なんとこの製品はバッテリー駆動で稼働するモバイルトランスミッターにもなる代物だったのでした。
写真右の裏面IOポートは左からAUX, 光端子, USB-C, 3.5mmアナログ入力ができるようになっております。USB-CポートはPC等とのデジタル接続兼充電ポートにもなっています。
接続実験!
『LE audioってば、やっぱ難しい。。。』 こんな感想で実験を締めくくるのかな、、、と初めは思っておりました。ところが実験を進めていくうちに・・・・・「あれ?今回割と良くね?」という雰囲気が漂い始めました。もちろんまだ普及半ばのLE audioということで100%思うようにいかなかったのは事実ではありますが、それでも思ったよりもマネージドというかある程度想定の範囲内な感じで事が進み、結果割と納得感のある実験、というかテストになりました。
今回の実験は大きく分けて3つ:
- Bluetooth Classicモードでの接続
- LE audioモードでの接続
- Auracastを使った配信
このうち1と2は結果的に接続時の条件で自動的に振り分けられるため、実験としては1+2の受信実験と3の配信実験となります。実験には3台のイヤホンを使用しました。といいつつほかにも何台か試したのですが傾向が似ていたので代表的な3つの傾向のイヤホンとして紹介します。
- Master & Dynamic MW09
日本未発売のラグジュアリーTWS。 Qualcomm Snapdragon Sound対応。aptX Lossless対応。LC3対応、Auracast対応予定 - Creative Zen Air Pro
7,000弱のバジェットカテゴリーイヤホンながら、LE audio対応を前面に出したマーケティング。LC3、Auracastともに対応明記。さらにLC3+対応も明記(今回確認対象外) - Redmi Buds 5 Pro
一世代前のXiaomiの安価な人気イヤホン。LE audioへの対応は積極的に表明していないが、スペック表にLC3対応記載あり。

結果から言ってしまうと。上記3機種は以下のような結果となりました。
- Master & Dynamic MW09
Bluetooth Classicでの接続、[SBC・aptX・aptX adaptive high quality・aptX adaptive low latency]に切り替え可能。 - Creative Zen Air Pro
LE audioで接続、[LC3 Low Latency・LC3 High Latency]に切り替え可能。Auracast配信接続は失敗。 - Redmi Buds 5 Pro
LE audioで接続、[LC3 Low Latency・LC3 High Latency]に切り替え可能。Auracast配信接続実験成功。
そういった意味ではRedmi Buds 5 Proがダークホース的な位置づけとなりました。実験の仔細は以下の通り。

- Bluetooth Classicで接続するか、LE audioで接続するかの意図的な選択はできない
- 恐らく、LE audioで接続可能と判断された場合に優先的にLE audioで接続される
- LE audio接続からBluetooth Classic接続への後からの切り替えはできない
- aptX Lossless対応であろうが、LE audioで接続しようが“Lossless”LEDが光ることはなかった。
- 説明書に詳しい記載はなかったが、接続成功後に物理ボタンの一番左にある“ペアリング”ボタンをダブルクリックすると、BT/LEそれぞれのモード内でのコーデック変更が可能だった
- 接続自体ができないイヤホンもあった(B&W Pi7など)
- MW09はaptX adaptive high qualityでの接続もできたものの、接続ビットレートの不足からなのかブツブツとなって音が切れることもあった(low latency以下はOK)
- LC3 Low Latencyはゲーム向けの低遅延モードのためか、音質は満足できるものではなく、まるで昔のテープの回転がずれたような、ボヨボヨとした音になってしまうことがあった
- LC3 High Latency接続では音はかなり満足のいく結果に。こちらでは音が変になることはなかったので上記LL接続時の不具合は接続レートの不足ということではないはず
- 上記音質の不具合や、接続できない機種が多かったことに関しては、こちらの最新ファームウェアにアップデートしたのちに状況は多少改善した。
- 結果的にAuracast配信接続実験成功機種はRedmi Buds 5 Proのみとなっているが、イヤホン単体のみで配信を受けることができたのは一台もなかった
- Redmi Buds 5 ProがAuracast配信を受信したのはスマホ(Xiaomi 14 Ultra)経由で受信できたのです。
- スマホにイヤホンを”LC3″接続して、
- その後スマホのBluetooth設定画面一番下の『追加設定』というメニュータップ
- 『オーディオをブロードキャスト』メニュータップ
- 『付近のブロードキャスト』表記下のリストから該当Auracast(らしきもの)を選択
- 音が流れてきた!

考察&まとめ
最後のAuracastの部分は考えればなるほどなのですが、そのAuracastを聴くということに対して能動的に何かアクション(今回であればスマホ経由で該当配信を選択)を起こさなきゃAuracastが聴けないってのは当たり前で、対応イヤホン装着時に何もアクションが必要なければ街を歩くだけで不要な音声や情報がなだれ込んできちゃうことになっちゃうからです。 Auracast配信機に登録済みのイヤホンなら自動で受信できるのか?とも思っていたのですが、登録済みのイヤホンってだけでは聴くことはできませんでした。つまりは今後イヤホン単体でAuracastを受信するってのは現実的じゃないのかもな?と思いました。選択リストから選ぶというアクションが必要なのでスマホやスマートウォッチ、AIメガネなどの文字情報確認端末とセットということになるのかな、、、と想像したり。
接続自体の結果ですが、今回何台かの機種がLE audioでの接続ができたこと自体喜ばしかったのですが、その裏で『LC3対応』を謡っていながらLC3接続ができなかった機種が何台かあったのも事実です。上記Bluetooth Classicで接続できたMW09もLC3対応表記でしたし。
音質的にaptX adaptive high qualityがブツブツとなったり、LC3 Low Latencyが聴けたもんじゃなかったってのはaptXコーデックやLE audio(LC3)のせいというよりは、このトランスミッターの成熟度とか使っているパーツの質とかそちら由来なんだと思います。
つまりは思ったよりかは意味のある成果を感じ取れたという贈り物があった半面、やはりLE audioはまだ発展途上なんだな、ということも実感した実験でした。”Bluetooth接続アダプター”って書いてあるのに自分のBluetoothデバイスが接続できるのか恐る恐る博打のような気構えでそれを購入するなんてことはないのが当たり前の世の中なのに、“LE AUDIO”対応と書いてあるトランスミッターにLE audio対応イヤホンが接続できる保証は誰にもできないというか、半分かけみたいなものってのが現状なのですからね、、、
ということで、今回駆け足で『次世代』のLE audioトランスミッター”Eppfun AK8675MAX1” を実験ともども紹介してまいりましたがいかがだったでしょうか。冒頭でも触れましたが現状「LE audioじゃなきゃだめ!」という状況が見いだせないなか、積極的にLE audio対応製品を購入する必要は論理的には存在しないのですが、そういったあやふやなものをいち早く試してみたいという変な層は少なからず存在する(わたし)ので、そういった方には現状5000円前後で買えるおもちゃとしていかがでしょうか? そうやって接続できたイヤホン等をWIKIなんかにみんなで登録したりしてね。

それでは今回はこの辺で!
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