BOSEによるチューニングや、Dolbyオーディオ、LDAC対応など、音へのこだわりを前面に出したOWSが登場。しかしてそれは、『選択のOWS』でした。
Born to Inspire
Born to Inspire – これがこのイヤホンのメインキャッチコピーのようです。色々な意訳ができそうですが、『突き動かすこと、それが使命』 とか『感動を生み出すために生まれた』とかでしょうか。
正直言ってこちらを販売している企業Baseusは音響機器の世界では三番手以降のランナーというか、「周辺機器メーカーがイヤホンも出している」『日本でいうサンワ』のようなイメージを持っていました。それが突然のニュース。Baseusが『SOUND BY BOSE』『Dolby Music・LDAC対応』『Knowlsのハイブリッドドライバー搭載』と怒涛の売り文句を詰め合わせたイヤホン・ヘッドホンを発表。正直驚きました。しかも例えばイヤークリップタイプの開放型ワイヤレスイヤホンOWSが$129.99(2万円弱)って言うんだから二度驚き。もうInspireされちゃいました。
同様に”SOUND BY BOSE”などを謳った完全ワイヤレスイヤホンTWSやワイヤレスヘッドホンも発表されましたが、最近はオープンタイプのイヤホンを多用することに気が付いてこちらのオープン型ワイヤレスイヤホンOWSに狙いを定めました。
ってことで、早速購入。まだ日本で発売されていなかったので探したところ今回は中国からではなく米国からの輸入の方が安そうということで米国Amazonから購入。定価$129.99、$20オフクーポンがああったので使用、送料手数料が$9.14。ここまでで計$119.13(1.75万円程)。これに輸入消費税等のデポジットが$13.91加算されたけど、恐らく実際は半額くらいで済むので最終的には1.85万円程で手に入ったことに。通常配送だったけど最終的に8日で到着、早い。最後はヤマトさんが納品。こうしてBaseusの先進的・野心的OWSが届きました。。。

Baseus Inspire XC1
まずはスペック一覧を紹介しましょう。こちら。
製品名 | Baseus Inspire XC1 |
---|---|
フォームファクタ | オープンイヤー・クリップ型(耳掛け/耳挟み) |
ドライバー構成 | ハイブリッド 2-Way(ダイナミック + バランスドアーマチュア) |
DD径 | 10.8 mm |
BAドライバー | Knowles(高域担当) |
対応コーデック | SBC/AAC/LDAC + Dolby Audio |
防水・防塵 | IP66(イヤホン本体) |
再生時間 | イヤホン単体:約8時間 / 充電ケース併用:最大約40時間 |
急速充電 | 10分充電で約2.5時間再生 |
充電時間 | イヤホン:約1時間 / ケース:約1.5時間 |
耳サポート | 柔らかく刺激のないシリコン製エアクッション |
感度 | 123 dB SPL |
インピーダンス | 16 Ω |
周波数特性 | 20 Hz – 40,000 Hz |
低遅延モード | 約60 ms |
Bluetooth | Bluetooth 5.4 |
重量 | 約6 g(片側) |
マイク / 通話 | 4マイク(AIノイズ抑制) |
付属品 | USB-Cケーブル、取扱説明書 |
アプリ / EQ | Baseusアプリ対応(EQプリセット:SuperBass 3.0 / SuperBalance 3.0 など) |
- aptX系列やLE audioのコーデックには対応していません。
- 防水性能が一般的なイヤホンより少し高めで、ケースを含めた再生時間が少し長めという感じ?
- 低遅延モード設定があるが、性能はそこそこ
- やはり『音』へのこだわりが垣間見えるスペック表に見えます
オープン・ザ・ボックス
さて次は届きたてほやほやの製品を実際に見てみましょう。今回購入したのはブラックとオフホワイトから選択できるカラーのうち『オフホワイト』を選択。実際のケースの色はシャンパンゴールドの蓋にオフホワイトの収納部。イヤホン本体も同じ配色で、どれも艶消し処理が施されていて高級感があり、印象は上々です。

外装はいたってシンプル。派手さはなく質実剛健な感じですが、蓋にはLDACのマークと、今回のエース?『SOUND BY BOSE』のロゴが光っています。また底には日本の技適マークが掲載。安心して日本で使えますし、日本での発売も近いことでしょう。
ふたを開けてもこれまたシンプル。和紙を思わせる落ち着いた内装です。付属品もまたまたシンプル。USBケーブルと説明書のみの必要最低限な内容です。説明書にも多国語併載ですが日本語も掲載されています。

前述の通りケースは艶消し処理が施された落ち着いた気品ある佇まい。Baseusロゴと共に正面に『SOUND BY BOSE』のロゴが鎮座しています。 蓋を開けてみるとスタンダードな横並びの配列でイヤホンが収納されています。この収納部分に一つ???なところがあったのですが、それは後程。

そしてイヤホン本体がこちら。公式な素材記述は見当たらなかったのですが恐らくABS樹脂系の素材。イヤホンのハウジング部分とツルの部分がほぼ一体化して同じ素材が使われており、ツルの部分が少し硬いかな、という印象。そして下の右の写真、お気づきでしょうか?当方激推しポイントが。じゃーん。そう、物理ボタン搭載です! 実際に操作を司る操作系物理ボタン搭載です。はい、満点!w

“ゼロセンスエアクッション。内部に硬いパーツはなく、圧迫感もありません”と公式で謳っていますが耳内部にあたる部分のみに恐らく液状シリコン素材が使われており、実際に触ってみるとプニュプニュと弾力を持たせてあります。「このおかげで耳あたりが良く…」とはあまり実感がありませんが、実感がないけど恐らく長時間着けていることによる負担が減っているのでしょう、、、きっと。 ただこのツルのアーチが堅いという印象もありつつ、実際耳をはさむプレッシャーは強めに感じました。
すでに販売されている米国や中国の反応を探ってみると、多くのレビューでは、『通常利用では装着感に大きなストレスはないとされる一方、長時間使用時にはブリッジ部が耳を軽く挟むように感じることがあるという指摘』があります。 「優しいハグのよう♡」と謡ってはいるのですが。。。

最後に大きさ比較です。いつものようにHuawei FreeClipとの比較です。ケースは同じようなオーバル系の形ですが、Baseusの方が一回り二回り大きく感じました。イヤホン本体も同様に大きさ厚みともBaseusの方がHuaweiよりも大きく厚く見えます。実際装着するとその差はさほど感じませんが。

試聴雑感&アプリ体験
アプリインストール
さて、では試聴の段に入っていきましょう。今回は何といってもウリである、
- SOUND BY BOSE
- Dolbyオーディオ
- LDAC
これらがどれほどまでにこの製品の価値を挙げられているか確認していきましょう。
まずアプリのインストール。アプリストアにある『Baseus 倍思』をインストール。Bluetoothの認識ともども何の問題もなく接続です。下にあるのがアプリのデフォルト画面(左)と歯車設定画面(右)です。色の選択はしていないのに持っているオフホワイトの画像です。認識しているのかな?
メイン画面ではDolbyオーディオと書かれたトグルが最初に設置されています。その下にイコライザーがありデフォルトで『Dolbyオーディオ:オフ / EQ:SOUND BY BOSE』が設定されていました。なおもう一つの目玉のLDACはサウンド設定の次画面にありデフォルトではこちらはオフでした。歯車設定画面は特に大きな機能はありませんでした。

SOUND BY BOSE
ではまずそのデフォルト設定である、
- Dolbyオーディオ: オフ
- EQ: SOUND BY BOSE
- コーデック: AAC(LDAC オフ)
で試聴してみます。今回は故あってストリーミングで比較したいと思います。今回はJAZZアルバムの”cozy you (and other nice songs) / aron!”をチョイスです。秋の夜長ってことで。

かなりご機嫌な音が自分の周りにあふれてきました。「オープンの割に良い音」みたいな表現がこの手のオープンイヤホンで使われますが、そのような感覚でなく「小さい店のステージで真横でJazzカルテットが演奏してくれている」っていう感覚です。なんというかイヤホンで音楽を聴いているというよりはスピーカーに近いって言うんでしょうか。厳密にはちょっと違うんですが。でもすごい良い感じです。このような静かな心地よいJazzにピッタリです。
この製品の最大の目玉である『SOUND BY BOSE』が効いているのか、ベースやドラムの音が強すぎずかつ印象的に響いてきます。クラリネットやピアノの音も透き通って抜けていきます。比較のために他のEQも使ってみますが、ジャズ・ロックだと中域が強すぎてコレジャナイ感。低音強化だと低音の圧が強すぎて耳に残りすぎるなどなど。不思議に”SOUND BY BOSE”がいちばんしっくりきます。プラシーボでしょうか。ちなみにデフォルト設定だとフラットやイコライザーオフという設定がありません。ユーザー設定のカスタマイズができるのでそこですべてフラットにすれば”フラット”にできるのでしょうが、EQにフラットやオフが無いのは初めての経験かもしれません。“SOUND BY BOSE”がデフォルトなんですよ、ということなんでしょうか。

Dolbyオーディオ
“SOUND BY BOSE”の心地よさに気分がアガリつつ、これにDolbyオーディオ効果を合わせたらどうなるのだろうという好奇心が沸き上がります。
ちなみにDolbyオーディオというのは”Dolby Atmos”と混同しがちですが、Dolbyオーディオは『ドルビー社の幅広い音質向上技術全般のブランド名であり、Dolby Atmosは、その中の一つの特定の技術(オブジェクトベースの立体音響技術)を指す』つまり単に立体音響効果を実現するだけでなく、ストリーミングオーディオなどの限られた条件の音楽でも情報を補って最適化してくれる、さらに環境が対応してさえいれば立体音響効果も実現するよ。という感じでしょうか。
実際にDolbyオーディオのトグルをオンにしようとするとアプリから以下の注意が飛んできます。「最適な状態にするには、お使いになっているスマホでDolby Atmosをオンにしてください。」

了解です。使用しているXiaomi 15 UltraではDolby Atmosを使用する際は設定の「サウンド効果」でオリジナルのまま行くかDolby Atmosを使うかを選びます。ということでここをDolby Atmosに設定しつつ、BaseusアプリでDolbyオーディオトグルをオン、上記のCozy youのDolby Atmos版で今度は聴いてみます。
・・・ すんごい3D感は感じることはできませんでしたが、それでも目を閉じるとそれまでは目の前にあったステージに自分が寄って行って、クラリネットやドラムが斜め後ろに行ったように聞こえます。ただ何となく違和感があって再びアプリを見てみると一つのことに気が付きました。
とまどい
「あれ?イコライザーが外れている」
再び”SOUND BY BOSE”をオンにしようとすると、嫌な感じのアラートが、、、

「もしかして、両立できないですと!!」
機能的に、なのかライセンス的な制約なのか、”SOUND BY BOSE”と”Dolbyオーディオ”を両方ともオンにすることはできませんでした。Dolbyオーディオによってストリーミング音源をリッチにしつつ、SOUND BY BOSEで低音を豊かにして音楽を聴くという夢ははかなくも散り去っていきました…
LDAC
まぁ、できないものはしようがないです。おとなの事情もあるのかもしれません。気を取り直してもう一つの目玉であるLDACでの試聴です。今となってはこの手のイヤーフック型オープンイヤホンにLDACが搭載されているというのは珍しくもないですが、SOUND BY BOSEやDolbyオーディオ対応のイヤホンでLDACとなればまた違います。
・・・・・ いやんな予感

『LDACを有効にすると、Dolby Audio Battery Saver Sound by Bose Low Latency Modeが無効になります。』
「LDACさんよーーーーーーーーー。」 心の声です。
ここに来て忘れた頃に降りかかってくるLDACさんのタカビーな制約です。技術的制約(処理能力・帯域の限界)なのか、仕様的制約なのか、マーケティング戦略的な制限なのかは私にはわかりませんが、LDACを使うとこの商品の他の目玉機能はほとんどすべて使えなくなります。
ちなみに音質的な感じ方ですが、LDACをオンにして同じ楽曲を聴いてみると確かに音質は繊細になった気がしますが、如何せん音圧が低く設定されてしまう仕様のようです。かなり音量が低くなっちゃう。つまりはLDACを聴くためには音量アップの必要あり。この音圧が低くなってしまうという感想は中国などのSNSでも意見が上がっていました。
その他所感
冒頭で『この収納部分に一つ???なところ』といった点ですが、これが未だにどういった意図なのか謎のままです。というのも今回の収納部分ですが上から見ていただくとわかるのですが、ほぼほぼシンメトリーというか左右差がありません。実際にイヤホンは左右どちらでも収納できます、特に変な違和感もなく。 Huawei FreeClipは『左右どちらに装着しても内部の機能的判断で左右の認識を自動で行います。』的な謳い文句で画期的で実際イヤホンも左右どちら再度にも収納できました。故にこのXC1もそうなのかと思い左右自由に装着しようとしたところ、Huawei FreeClipにはないものがXC1にはついていることに気が付きました。「ボタンがあるのでそれも左右自動なの?」しかし実際は左右自動ではなく”ボタンを下に設置した方が正解”の装着方法で逆にすると左右音楽も逆に聞こえてしまいます。 しかもイヤホンにはRLの表記も恐らくなく、とにかく『ボタンが下に来る方が正しいに決まっているだろ、察しろ!』的な、何も注意喚起が無いことに戸惑いを覚えました。これが慣れている企業となれていない企業との目に見えにくい、けれど差を埋めにくい違いなのかな、と。

『選択のイヤホン』
SOUND BY BOSE、Dolbyオーディオ、LDAC対応・・・ これら魅力的かつ力強いワードでかなり期待感が高まっていました。 特に疑問も抱かずに『BOSEサウンドで力強い低音と、Dolbyオーディオできめ細やかな音楽を、ハイレゾコーデックで楽しむ…』こんな夢想をしていたような気がします。

それが、そのどれもが一つとして重なり合えることなく単体でしか機能しないと知った日には、、、かなり落胆が強いと言っても言い過ぎな感覚ではなかったと思います。様々な情報を重ね合わせれば確かにそうなのかもしれませんが、HPなどでは全ての機能が一堂に!感が高く、そんな魅力的な機能達をどれを使うか「ひとつに選択しなければならない」とは全く思いませんでした。
だったら、他のイヤホンでも機能するLDACいらないじゃん!とかね。
結局今のところ、一番聴いていて気持ちの良かった”SOUND BY BOSE” EQを使用して音楽を聴いています。気持ちよさの前にはハイレゾかどうかなんてのは気になりませんし、元々立体音響をたしなむ方ではないので必然の選択かと思います。
ということで個人的には様々な先進的・野心的機能を含有するイヤホン・・・ってのはおいておいて、一番の目玉であったであろう“SOUND BY BOSE”チューニングのオープンイヤホンとして楽しんでいます。
色々書いたので誤解しないでいただきたいのですが、“SOUND BY BOSE”モードで聴くこのBaseus Inspire XC1の音は、個人的にはオープン型イヤホンの中でトップクラスに好きな音です。楽しくなる、これ本当に大事! ただ途中でも記載した通り多少の耳をはさむ圧迫感が強いので休み休みですなんですけどね♡。

ということで、「選択のイヤホン」の回でした。
様々な思いが錯綜しましたが、今回はこの辺で、それでは!

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